金型の仮型、本型?
機構部品やコネクタ・ケーブルといった電気部品の開発に関わると、部品を成型するための金型の話をすることはよくある。 一般的に「金型」とだけいうと、鋼で作られたものを指すことが多いのだが、たまに金型の中でも「仮型」とか「本型」とかいう言葉を聞くことがある。規格などで「これは本型」「これは仮型」と厳密に定義されているわけではないが、私の経験から一般的に使われている仮型と本型の違いについてまとめてみた。
※細かく書くと金型にも射出成形とかプレスとかダイカストとか色々あるのだが、今回は一般的な仮型、本型の違いにフォーカスして書いた。
仮型(簡易型、簡易金型):小ロット向きの低コスト、短納期の金型
まず、仮型というのは、後述する本型と対比する意味で使われる意味が多い。最終系の金型(本番)に対して、こちらは仮の金型というイメージ。簡易型、簡易金型、試作金型などとも呼ばれる。後述する本型は固い鋼でつくられるが、こちらは柔らかいアルミなどでつくられることが多く、加工のしやすさから本型より納期が短く、作成コストも安いことが多い。その反面、柔らかいため消耗しやすく、金型から成型可能な成型品の数(ショット数)が本型よりも少ない。
このため、大量生産品の量産というよりは、少量生産の製品や、大量生産品の試作の目的で使われるケースが多い。
本型(量産型、量産金型):大量生産品向きの鋼の量産用金型
本型、本金型、量産型、量産金型と言われるものは一般的に鋼でつくった金型を指す。冒頭で書いたように、一般的に「金型」というと鋼でつくったものを指すことが多いが、仮型、簡易金型と分けて本型、量産金型と呼ばれるケースが多い。仮型に比べると加工に時間とコストがかかる反面、摩耗しにくいため、大量生産品の成型には向いている。仮型と本型の特徴の違いを表にまとめると、以下のようになる。赤い部分がデメリットで、青い部分がメリットとなる。
どちらを使うべきかはケースバイケース
大手のメーカーが大量生産するような製品の樹脂成型には、最終的には鋼の本型が使われる場合がほとんだだと思うが、試作段階で仮型により試作品を成型するメーカーは多いと思う。一方で、生産台数が少ない製品や、展示会で配るノベルティで使うような成形品であれば、簡易金型で事足りるケースもあるだろう。
成型品をどういう金型で作るかは、試作か量産か、少量生産か大量生産かによって異なってくる。
どちらを使うべきかはケースバイケースだが、選択肢として簡易金型というものがあるということは知っておくと役に立つはず。
共取り、セット取り、多数個取り金型についてはこちら
今回は仮型、本型の違いについてまとめたが、金型の用語で共取り(ともどり)、セット取り、多数個取り金型というものもある。これらについては以下でまとめている。知っておいて損はないと思うので興味があればぜひ読んでみてください。金型の共取り(セット取り)と多数個取り:違いやメリット、デメリット
参考文献
試作方法の違いを理解して設計する | 失敗しない筐体設計の考え方 | 筐体設計のススメ | キーエンス金型設計・製作・プレス加工 | 浜野製作所
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