クロックバッファにも種類がある
一つのクロック入力から、複数のクロックを出力できる部品であるクロックバッファ(Clock Buffer)。Texas Instruments(TI)やAnalog Devicesといった会社から様々なクロックバッファICが販売されている。便利なクロックバッファだが、電圧や周波数だけで選定すると痛い目にあうことがある。今回はクロックバッファの種類や注意点についてまとめてみる。
クロックバッファにはPLLあり・なしの2種類がある
ざっくり分類すると、クロックバッファにはPLLを内蔵しているものと、PLLを内蔵してないものがある。色々なメーカーの部品を見る限り、PLLの有無ではっきりと呼び名が決まっているわけではないようだが、一般的にPLLを内蔵しているものはPLLクロックバッファやZero-Delayバッファなどと呼ばれ、PLLを内蔵していないものはファンアウト(Fanout)バッファと呼ばれる。
ただし、「クロックバッファ」としか書かれていないICもあるので、そういったものはデータシートでIC内の構造を確認して、PLLの有無を確認する必要がある。
PLL有無の決め方は低ジッタを取るか、低遅延を取るかがポイント
まずPLL有りのクロックバッファのメリットは、入力クロックに対して出力クロックを低遅延で出力できることである。入力クロックと出力クロックの位相が大きくずれていると困るようなケースでは、PLL有りのバッファを使うことが望ましい。次にデメリットだが、出力信号の位相を適宜修正するというPLLの性質上、出力クロックのジッタ(Jitter)が大きくなってしまうということが挙げられる(ジッタについてはこちらのページを参照)。
PCI Expressなどの高速信号を扱うFPGAなどでは、高速信号トランシーバのリファレンスクロックとしてクロックバッファの出力クロックを使う場合がある。そのときにPLL有りのクロックバッファを使うと、リファレンスクロックのジッタが増加して高速信号の信号品質に影響を与える可能性がある。
一方、PLL無しのクロックバッファのメリットはPLL有りのクロックバッファよりもジッタが少ないことがメリットであるが、出力クロックの位相を調整する仕組みが無いので、PLL有りのクロックバッファよりも遅延が大きくなることがデメリットとなる。
以下の表にPLL有無によるクロックバッファの特徴の差をまとめた。
ただし、最近ではPLL有りでもジッタを少なく抑える工夫がされているクロックバッファや、PLL無しでも出力遅延を少なくする工夫がされているクロックバッファも存在する。
遅延があるからダメ、ジッタがあるからダメ、というわけではなく、想定している用途で許容される遅延やジッタがどの程度になるかを考えながら、クロックバッファを選定にしていくことが必要である。
参考文献
丸文株式会社 : はじめてのクロックhttps://www.marubun.co.jp/service/technicalsquare/a7ijkd000000bojg.html
株式会社マクニカ:バッファについて
https://www.thine.co.jp/products/pr_details/Repeater.html?SmartPhonePCView=2
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