NRZとPAM(PAM4、PAM8など)の比較
最近、PAM4に関するニュースを聞く機会が増えてきたので、従来一般的な通信機器で使われていたNRZとの違いをまとめた。まず、NRZ(Non Return to Zero)方式はデジタル信号を1と0の2値で伝送する方式で、一般的なデジタルICで良く使われる。NRZでは、1タイムスロット(デジタル回路でいうとクロックの立上がりや立下りで信号を取得する最小時間単位)あたりに0または1の1bitのデータを伝送する。
一方で、PAM(Pulse Amplitude Modulation)伝送方式は1タイムスロットあたりに2bit以上の値を伝送する方式であり、PAM4では00/01/10/11の2bit(4値)、PAM8では000/001/010/011/100/101/110/111の3bit(8値)の信号を伝送する。
PAM方式を使うことにより、1タイムスロットあたりの伝送bitを上げることで、同じ周波数の信号でもPAM4ならNRZの2倍、PAM8ならNRZの4倍の情報を伝送することができる。
例えば、10GHzの周波数の信号をNRZで伝送すると帯域は10 * 2bitで20Gbpsだが、PAM4で伝送すると帯域は10 * 4bitで40Gbpsになる。
PAMの課題
「じゃあ全部PAMにしちゃえば良いじゃん」と思うかもしれないが、採用に当たっては課題もある。一つ例を挙げると、物理的に信号を伝送するときの信号品質の確保がある。NRZであれば、ある閾値を上回れば1、下回れば0と値を決定できるため、伝送する信号に多少オーバーシュートやアンダーシュートがあっても問題ない。
しかし、PAMでは値を2bit以上で判別する必要があるため、オーバーシュートやアンダーシュートが大きいと受信側で正しく信号が判別できず、エラーレートが増加する。また、信号に加わるノイズに対しても同じことがいえるので、NRZよりもエラーレートが増加しやすい。
このような技術的な課題があるため、現在、各メーカーで技術的な検証などが進められている。
PAMが使用される分野
イーサネットでは早い段階からPAM4の採用が始まっており、200GbE/400GbEなどの次世代伝送規格で採用されている。イーサネットでの対応状況については、計測器メーカーのアンリツの以下の資料がわかりやすい。また、PCI Express 6.0でもPAM4の採用がPCI-SIG(PCIeの規格団体)からアナウンスされている。
最近では半導体の分野でもDDRメモリなどに採用されるといったニュースも出始めており、電子機器や通信機器の信号高速化に伴い、ますます利用される分野は広がっていくと予想される。
0 件のコメント :
コメントを投稿