LDO(リニアレギュレータ)のスルーレート(Slew Rate)とは?

LDOのスルーレート

電源ICで良く使われるLDOのデータシートなどを見ていると、「スルーレート(Slew Rate、SR)」という言葉を目にすることがある。

LDOの使い方によってはあまりスルーレートを意識しないケースもあり、LDOは使ったことあるけどスルーレートが何かわからない、という人もいるかもしれないので、簡単に概要を解説してみる。

スルーレートは単位時間あたりに出力電力が変化できる割合

まず、スルーレートはオペアンプの設計で良く使われる言葉だが、一般的には下の図のようにLDOの内部でもオペアンプが使われているため、オペアンプの設計で使われる「スルーレート」とほぼ同等の意味で使われる場合が多い。LDOの動作原理については説明を省くが(気になる方は参考文献を参照)、LDOにおけるスルーレートは「出力電圧が単位時間あたりに何ボルト変化できるか」を表している。

もう少し詳しく説明すると、入力電圧VinがLDOに入力された際、出力電圧VoutはVinと同じように立ち上がるわけではなく、下の図のように立ち上がりに傾きが発生する。この時のVoutの変化ΔVを単位時間Δtで割ったものがLDOのスルーレートとなる。一般的には単位時間はus(マイクロ秒)で規定されるので、スルーレートの単位は[V/us]、または[mV/us]と表記される。

LDOのデータシートのスルーレートの値を見ることによって、そのLDOのVoutの応答の速さを表す性能を知ることができるため、LDOの応答の速さが求められる設計では重要な指標の一つになってくる。逆に、応答の速さに制約が無い設計の場合はあまり重視されないともいえるため、データシートにスルーレートの記載がないLDOもある。

なお、上の図ではVoutの立ち上がりでスルーレートを定義しているが、立ち下がりのスルーレートも定義することはできる。ただ、一般的なLDOでは電源の立ち上がりの応答の速さをスルーレートとして定義するケースが多い。

スルーレートの表記の例

ひとつデータシートの表記の例を上げておくと、以下のON Semiconductor社のLDO「NCP151」の3ページ目に「Vout Slew Rate」という項目がある。

https://www.onsemi.jp/pdf/datasheet/ncp151-d.pdf

このICはNCP151AとNCP151Cの2バージョンがあるが、Aだと100[mV/us]、Cだと30mV[mV/us]のスルーレート性能をもっている。そのため、スルーレートとしてはAの方が単位時間あたりにVoutの変化が大きい、つまり応答が早いということになる。

LDOの出力応答に制約がある設計では、データシートのスルーレートを確認してICを選定する必要がある。

参考文献

LDOとは? | DC/DCコンバータとは? | エレクトロニクス豆知識 | ローム株式会社 - ROHM Semiconductor リニアレギュレータの動作原理 | 電源設計の技術情報サイトのTechWeb

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