金型の共取り(セット取り)と多数個取り:違いやメリット、デメリット

金型の共取り(セット取り)とは?多数個取りとは違う?

金型に関わる仕事をしていると、共取りとかセット取りという言葉を聞くことがある。また、多数個取りという言葉も聞くことがあり、混乱する人も多いのではないかと思う。今回はこれらの言葉の意味や違い、それぞれの方式のメリット、デメリットなどをまとめてみようと思う。

まず、共取りとセット取りは同じ方式を指すので、以降ではまとめて共取りと呼ぶ。共取りとは、以下のイメージ図の左側のように、1つの金型で複数の異なる形状の成型品を成型することである。なお、実際の金型では樹脂を流し込むための経路(スプール、ランナー、ゲートなど)があるが、以下の図では割愛している。

一方、1つの金型で同じ形状の成型品を成型する場合、一般的には共取りとは呼ばずに、多数個取りと呼ぶ。例えば以下の図だと2個取りになっており、1つの金型が1回の成型(1ショットとも呼ぶ)で個数が増えると4個取り、6個取りなどと呼ばれる。
なお、共取り金型は英語ではcomposite mold、多数個取り金型はmulti-cavity moldと呼ばれる。

共取りのメリットとデメリット

メリットとデメリットはケースバイケースの部分もあるが、以下では一般的な内容について書く。

まず、共取りで設計するメリットとしては、複数部品を1つの金型で取ることにより、部品ごとに金型を作製するよりも金型費や材料費が少なくすむため、コストダウンにつながる。また、1つの製品に必要な部品をセットで共取りにすれば、部品管理が容易になるケースもある。

デメリットとしては、異なる形状の成型物を1つの金型に掘り込むため、成型の条件が複雑になる。例えば大きさが異なる成型品を同じ金型に掘り込んで成型すると、大きい成型品は樹脂が十分に流し込まれずに一部が欠けたような状態(ショート)になりやすい。一方で、小さい成型品は樹脂が流れ込みすぎてバリなどが発生しやすい。このような不具合が発生しないように成型の条件を出す必要がある。

多数個取りのメリットとデメリット

共取りと共通する部分もあるが、多数個取りについても一般的なメリットとデメリットを書く。

まず、メリットについては1度に多数の成型品を作製できるため生産効率があがり、加工費のコストダウンにつながる。また、材料歩留まりも1個ずつ成型するよりも良いので材料費のコストダウンも期待できる。

デメリットとしては、同じ形状とは言ってもどうしても金型を掘るときに誤差は出るし、キャビティ(金型の凹んだ部分)の位置によって成形条件にも差が出るので、同じ金型でとった成型品でも外観や重量などのバラつきが発生することが上げられる。取り個数を増やすにつれて、このリスクは高まる。成型品に求められる精度と生産性を考慮し、取り個数を決定する必要がある。

金型の仮型、本型についてはこちら

今回は共取り多数個取りの違いについてまとめたが、金型の用語で仮型、本型というものもある。これらについては以下でまとめている。知っておいて損はないと思うので興味があればぜひ読んでみてください。

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